新たな課題:産業用IoT向けのマルチコアOSの拡張

産業用のIoT(モノのインターネット)により、効率性と生産性の大幅な向上が低コストで実現する時代をむかえようとしています。しかし同時に、接続デバイスが急増したため、ネットワークを介して膨大なデータをリアルタイムで処理・転送することが必要になりました。このようなデータに対応できる十分な処理能力をいかにして提供するかが大きな課題となっています。 

Tomas Hedqvist

現在の産業分野は、数年前のテレコム分野と同じような状況にあると言えます。その当時、モバイル・インターネットの台頭により、エンドポイントの急増に伴ってデータ利用が大幅に増加したことから、無線基地局における高速処理の必要性が高まりました。こうした処理は、極めて厳しいレイテンシ要件が求められるため、モバイルのコア・ネットワークやクラウドではなく、アンテナの近く(つまり基地局内)で行う必要がありました。結果として、基地局そのものを強化して、より大きな処理能力を持たせる以外にありませんでした。

Growth of Industrial IoT Devices

産業用IoTデバイスの成長 現在、産業用IoTは全く同じ課題に直面しています。つまり、スマート・ファクトリー、スマート・パワー・グリッドなどの産業用スマート・アプリケーションにより、エンドポイント数だけでなく、短時間に処理/転送する必要のあるデータ量も飛躍的に増大しています。産業用スマート機器のデータの多くは、テレコム分野の場合と同様に、ネットワーク・エッジ、つまり機器の設置場所の近く、あるいはデバイスの内部で処理しなければなりません。レイテンシ要件、ネットワーク帯域幅の制限、自律的なオペレーティング・デバイスを特徴とするネットワーク・エッジにおける処理では、何よりも高パフォーマンスが求められます。

 

テレコム分野では、各プロセシング・ユニットでCPUコア数を増やすことで、これを解決しました。今日、一般的なDU(分散ノード)には、24コア以上のマルチコア・プロセッサが搭載されています。マルチコア・プロセッサには、消費電力/フットプリントの削減とパフォーマンスの向上を両立できるというメリットがあります。産業用機器のコンピューティング・プラットフォームにおいても、シングルまたはデュアル・コア・プロセッサから8コア以上を備えたデバイスへと、同様の進化が必要です。

 

マルチコアはハードウェアの観点から問題を解決するものです。しかし、根本的な課題は、ソフトウェアと組み合わされたシステムとしてのパフォーマンスと決定性を多数のコアにわたって拡張できるランタイム・ソリューションをいかにして構築するかにあります。LinuxをはじめとするOSの多くは、メモリ競合やリソース競合によりOSカーネルで非決定的なジッタが発生するなどさまざまな要因により、適切に拡張することが困難です。

 

場合によっては、マルチコアや多コアのプロセッサでLinuxやその他のOSが直面する基本的なリアルタイム性の問題を回避する方法を使用することができます。(こちらから、Linuxでリアルタイム特性を実現する3つの方法を解説画像をご覧いただけます。)

 

また、一部の代替ランタイムには、多数のコアを持つSMP構成のデバイスで実行する場合であっても、低レイテンシや低ジッタなどのリアルタイム特性を維持しながら、リニアな拡張性を発揮するものもあります(こちらから、解説動画をご覧いただけます)。テレコム分野でベースバンド処理アプリケーションにマルチコアの能力を活用する方法としては、今のところ、これが最も効果をあげています。

 

何をすべきか?

産業のデジタル化に取り組む場合、無線アクセス・ネットワークでDUが進化してきた過程を見てみると、さまざまなことがわかります。将来も継続して利用できる製品を提供するためには、産業用デバイスやエッジ層におけるデータ処理へのニーズの高まりを考慮に入れなければなりません。大規模なマルチコア処理に耐えうるプラットフォームを用意するだけでなく、マルチコア・ハードウェア・プラットフォームの処理能力とその上で実行されるアプリケーションの間のギャップを、リアルタイム性やマルチコア拡張性によってどの程度埋められるかを理解することも必要になります。

 

脚注:上記以外にも、IoTとテレコムには多くの類似点や共通点があります。デバイス同士、デバイスとエッジ・サーバー、デバイスとクラウドの接続には、ネットワークとテレコムが必要です。次世代型モバイル・ネットワークである5Gは、産業用機器の接続で重要な役割を果たすことが期待されており、この分野で既に多くの試験が実施されています。しかし、産業用機器とモバイル・ネットワークがどのように接続し、情報のやり取りを行うかについては、別のブログ記事に譲ることとします。