次世代型エンタープライズ・サービスのローンチパッドとして有効な uCPE

Karl Mörner | Enea AB プロダクトマネージメント担当バイスプレジデント

 

先日、調査会社 Omdia 社のリサーチ・アナリスト Christopher Silberberg 氏とともにウェビナーに参加し、MSP (マネージド・サービス・プロバイダ) のビジネス成長戦略に関する提案として、基本的なネットワーキング・サービスに対するアドオンの提供について話しました。「MSP はそうしたことをとっくにやっているよ」という声もあるでしょう。確かにそのとおりなのですが、我々の提案は、柔軟性とコスト効率に優れたサービス・デリバリ・プラットフォームとして uCPE (ユニバーサル顧客構内設備) をネットワーク・エッジで活用することを前提としており、他とは一線を画すものです。

MSP の課題

MSP は、テクノロジーの進歩とそれに伴う顧客の需要に遅滞なく対応しなければならないという大きな課題に直面しています。サービスをアップグレードするために、固定機能のネットワーク機器を総入れ替えしなければならないとなると、テクノロジーの導入に遅れが生じ、エンド・ユーザーに古いサービスを提供し続けることになります。

その解決策として uCPE に移行する MSP が増えてきています。uCPE は、フレキシブルなサービス・デリバリ・プラットフォームであることがすでに実証されています。セントラル・マネージメント・システムにより、アプリケーションやネットワーク・サービスの追加、変更、置換を需要に応じて簡単かつ迅速に行うことができます。

私は、その仕組みを説明するために、uCPE のユースケース例として、マネージド Wi-Fi、ビデオ・アナリティクス、プライベート・モバイル・ネットワーキングの 3 つを紹介し、それぞれについて uCPE の役割を説明すると共に、付加価値がどのように、どこで発生するのかを明確に示しました。この記事では、前段として、アドオン・サービスが MSP の収益性にとって極めて重要である理由をまず説明したいと思います。

ネットワーキングと高価値サービスを結びつける必要性

顧客構内のエンタープライズ・ネットワーク・エッジで使用するインフラストラクチャは、急速に進化しています。個別のルーター、ロード・バランサ、ファイヤーウォールから始まり、SD-WAN と NGFW (次世代型ファイヤーウォール) などのセキュリティを組み合わせたネットワーク・インフラストラクチャに次々と移行し、さらに現在では、SASE のような新たなアーキテクチャへの関心を高めています。

ビジネス要件やテクノロジー要件の変化に対応するためにこうした進化が起こっているにもかかわらず、「セキュアなエンタープライズ・ネットワーキング向けのインフラストラクチャ」というユースケースは全く変わっていません。今日までこのインフラストラクチャは主に基本サービスで構成されており、MSP が製品やサービスで競合他社と差別化できる要素は限られていたことから、基本サービスが徐々にコモディティ化されてきました。

アドオン・サービスが MSP のポートフォリオの重要な部分であることの理由は、まさにそこにあります。アドオン・サービスの多くは、ある用途に特化しており、顧客に合わせて特別に開発されることもあるため、エンド・ユーザーにとっては付加価値の高いものになります。MSP は、そうしたサービスを提供することにより、競合他社との差別化と利益の増大を図ることができます。企業に提供するアドオン・サービスには、当然のことながら様々なものがあります。アドオン・サービスの選定、デプロイメント、収益性は、それらの開発・提供の基盤であるインフラストラクチャの柔軟性に大きく依存します。手始めとして、特定ベンダのパッケージ・バンドルをデプロイするのがシンプルな解決策であるように思えますが、特定ベンダに依存するとそのベンダにロックインされてしまい、サービスの開発と提供が大きく制限され、長期的には高いコストがつくことになります。  

以下は、3 つのユースケース例を用いて、仮想化プラットフォームを利用してサービスを自由に追加・更新できるインフラストラクチャのエッジに uCPE をデプロイするメリットについて説明します。

1 - サービスとしてのマネージド Wi-Fi

ゲスト Wi-Fi は、空港、ホテル、その他の公共の場所などで需要の高いサービスです。また、キャリアはショッピングモールや競技場などの場所でも Wi-Fi を展開し、モバイル・ネットワークの負荷軽減、帯域幅の増加、局所的なサービスの提供を図っています。プロバイダは、セントラル・マネージメントの導入により、サービスの収益化、共通ポリシーの適用、アクセス・コントロールに加えて、エンタープライズ Wi-Fi サービスの場合はユーザー管理も可能になります。このマネージメント・コンポーネントは通常クラウドベースのサービスであり、1 つの場所から Wi-Fi のコンフィグレーションやモニタリングを行います。ただし、これを実現するには、ローカルのソースからマネージメント・コンポーネントにデータを取り込む必要があります。

それには、顧客構内でプロビジョニングされている Wi-Fi コントローラに Wi-Fi マネージャーを接続し、これらのコントローラを Wi-Fi マネージャーとアクセス・ポイントの間のゲートウェイとして使用します。uCPE を導入すると、クラウドや Wi-Fi マネージャーに接続する ネットワーク・インフラストラクチャ (SD-WAN とセキュリティの組み合わせ) との共存を利用して、Wi-Fi コントローラをアドオン・サービスとして uCPE にプロビジョニングできます。

小規模オフィス、カフェ、コンビニといった小さな場所では、単一のアクセス・ポイントを uCPE に直接統合することが可能です。大規模なオフィス、空港、超大型スーパーマーケットなどの広い場所では、Wi-Fi コントローラを uCPE 上にプロビジョニングして複数のアクセス・ポイントに接続することで、施設全体をカバーします。

多くの企業では、大小の施設を組み合わせ、それらをすべてクラウド内の単一のセントラル・マネージメント・ポータルに接続していくと考えられます。

このコンフィグレーションでは、マネージド Wi-Fi は、MSP が既存インフラストラクチャを用いて提供できる多くのアドオン・サービスの 1 つでしかありません。uCPE は一元管理され、サービスはオンデマンドでデプロイできることから、新サービスの導入までの時間は数ヵ月から数分にまで劇的に短縮されることになります。

2 - サービスとしてのビデオ・アナリティクス

ウェビナーで紹介した 2 つ目のユースケースは、ビデオ・アナリティクスです。人工知能 (AI) をネットワーク・エッジに展開することで、収益性のある興味深いエンタープライズ向けサービスとして、次のようなものを提供できます。

  • 敷地内の監視
  • ソーシャル・ディスタンスのモニタリング
  • 店舗環境でのクラウド・マネージメント
  • 感情のモニタリング (小売での消費者行動の測定などに使用される)
  • スマート・シティ
  • 工場環境

ビデオ・アナリティクスをサービスとしてプロビジョニングする際には、大量の動画ストリームを処理するかが課題になります。1 台のカメラでも、毎日 GB 単位のデータが大量に作り出されます。信頼性のある固定接続があれば、そうしたデータ・ストリームをクラウドに簡単に転送して処理することができます。ただし、多数のカメラを使用したり、カメラがモバイル接続しかない遠隔地に設置されていたりした場合、動画ストリームのクラウド・サービスへの転送に必要な帯域幅が不十分であり、ボトルネックとなります。

これを解決するには、カメラの近くにデプロイした uCPE 上のネットワーク・エッジに、アナリティクス・ソフトウェアを配置します。こうすることで、情報がクラウド・サービスに転送される前に、動画ストリームを集約・処理することができます。uCPE が SD-WAN (ソフトウェア・ディファインド WAN ) サービスを通じてセキュア接続を既にホストしていれば、エッジ AI ソフトウェアの展開に最適な場所になります。リソースが最適化されるだけでなく、追加で機能が固定されたアプライアンスをデプロイする必要もありません。さらに、エッジ AI アプリケーションは CPU を使用して処理するため、uCPE での GPU の空き容量が大幅に増え、正確性も高まります。

3 - サービスとしてのプライベート LTE/5G

3 つ目の例は、産業用 IoT デバイスにセキュアで強固な通信を提供するプライベート LTE/5G です。工場、港、その他の産業施設でプライベート・モバイル・ネットワークを導入すれば、広域のワイヤレス通信でも、高帯域幅・低レイテンシを実現できます。

プライベート LTE/5G が重要な役割を果たす産業用ユースケースの典型的な例としては、AGV (無人搬送車) があります。車両のリモート制御や自動運転は、M2M (Machine to Machine) 通信を介した協調行動を利用するため、信頼性のあるワイヤレス接続が欠かせません。

これに関して、uCPE は、vRAN (仮想無線アクセスネットワーク) や UPF (ユーザー・プレーン機能) をはじめとするレイテンシ感度の高いコア・ファンクションなど、モバイル・ネットワークの一部をホストすることができます。これらは、セキュア SD-WAN を介して、クラウドやエンタープライズ・ネットワークに並列的に接続されます。さらに、ネットワークでの共存を利用してユーザー・プレーンで処理を終えるようにすれば、MEC (マルチアクセス・エッジ・コンピューティング) アプリケーションも uCPE 上で実行できます。

無線通信を別途 uCPE からデプロイすることで、カバレッジを最大化できます。実際には、プライベート LTE/5G ソリューションが十分堅牢であり、すべてのネットワーク・ファンクションを uCPE 上で実行できるとしても、オフプレミスの LTE/5G コア・デプロイメントで補完する場合がほとんどです。

また、産業環境の自動運転車も、マネージド Wi-Fi とビデオ・アナリティクスを活用します。ビデオ・アナリティクスの多くは MEC アプリケーションとして実装され、Wi-Fi はクリティカルではない企業内の通信やゲスト・ネットワーク用として、プライベート LTE/5G を補完します。このようにして、これら 3 種類のサービスすべてを同一の uCPE 上にプロビジョニングできます。

結論:ビジネスを成長させるには、uCPE をローンチパッドとして、これに各種サービスをデプロイすることが効率的

uCPE 上にプロビジョニングしたサービスは、迅速かつ簡単に置き換えたり、変更したりできるため、MSP は製品やサービスをシームレスかつコスト効率よく発展させることができます。エンド・ユーザーは、新機能にいち早くアクセスでき、セキュリティの向上、パフォーマンスの改善、カスタマイズ機能の実現といったメリットを享受できます。また、もうひとつ重要なのは、uCPE によって新しいアドオン・サービスが可能となるため、MSP は各顧客企業に合わせてサービスを個別化することでビジネスを拡大でき、その顧客を長期に渡り維持できるということです。MSP にとって、これは競争の厳しい市場で差別化を図るための優れた方法になります。

したがって、顧客オンプレミスに uCPE をサービス・デリバリ・プラットフォームとしてデプロイしておけば、仮に当初のサービスが単一アプリケーションに基づくシンプルなものであっても、将来的な拡大への足がかり(プラットフォーム)を用意しておくことができます。

uCPE は、ネットワーク・エッジにおける次世代型エンタープライズ・サービスのローンチパッドとして、コーポレート・ネットワーキングと高価値のアドオン・サービスをシームレスに組み合わせて、売上の増加と利益の拡大を実現できるプラットフォームなのです。