uCPE:エンタープライズ・サービスの新たな収益源

近年大きな注目を集めている SD-WAN の普及は、拡大の一途をたどっています。

急成長を続ける SD-WAN を利用して売上や利益を最大化するには、どうすればよいのでしょうか?今後数年間で SD-WAN の採用は一気に進むと予想されています。2020 年に調査会社 Futuriom 社が行った調査では、回答者の 92% が SD-WAN サービスや SD-WAN ソフトウェアの評価を行っていると回答しています。その流れを受けて、市場価値に関する見通しも極めて楽観的になっており、ACG Research 社の予測によると、マネージド SD-WAN 市場の価値は 2023 年に 25 億ドルにまで達するとされています。こうしたことから、この市場に巨大な商機があることは間違いありません。

しかし、SD-WAN の価値の源泉は、立場によって異なります。通信サービス・プロバイダの場合は、SD-WAN をマネージド・サービスとして販売すれば、有望な収益源となります。一方、キャリアの場合は、SD-WAN サービスを MPLS の収益損失の埋め合わせに使うことができます。エンタープライズ市場にサービスを提供する IT サービス企業の場合は、SD-WAN を活用して、新規サービスの導入やサービス改善、アプリケーションの一元管理による運用合理化を進めることにより、市場シェアを拡大し、企業顧客のロイヤルティを確保できるでしょう。

したがって、エンタープライズ・ネットワークにおいて、従来型のルーターやファイヤーウォールからセキュア SD-WAN への移行が急速に進んでいるのは、当然の流れと言えます。しかし人々の注目は、ネットワーク進化の次の大きな段階である SASE (Secure Access Service Edge) に移りつつあります。

ここからもっと先へ:シームレスな進化

SASE のアプローチに基づいて、SD-WAN は SASE アーキテクチャの基本コンポーネントに発展するというのが一般的なコンセンサスです。このことは、継続的なサービス開発が発生することを意味しています。この概念を取り入れているサービス・プロバイダは、単純なルーターから SD-WAN、そして SASE への発展をシームレスにサポートする必要があります。なぜなら、これらのサービスは本質的に異なるものでも、分断されたものでもなく、エンタープライズへのネットワーク・インフラストラクチャの提供を必然的に伴うからです。

 

最新のセキュリティ機能にも対応しつつ、SD-WAN/SASE アーキテクチャに向けてエンタープライズ・ネットワーキングをシームレスに発展させていくには、高い柔軟性が求められます。そのため、通信サービス・プロバイダは、有効なサービス・デリバリ・プラットフォームとして、uCPE (ユニバーサル顧客構内設備) への移行を進めています。uCPE は、COTS (商用オフザシェルフ) ハードウェア上で動作し、顧客構内で使用されている従来型の機器を仮想化します。これにより、サービス提供に個々のアプリケーションを使用するのではなく、必要なすべてのサービスのオンデマンド・プロビジョニングと一元管理が可能になります。

ネットワーキング・インフラストラクチャのコモディティ化

SD-WAN 市場は、数社のベンダが占有しています。それらのベンダが提供するソリューションは、同じような機能セットを使って同じ問題を解決しています。エンタープライズ・ネットワーク内の従業員、ブランチ、アプリケーション、リソースをセキュアに接続することは、普遍的かつ一般的なニーズであるため、マネージド・サービス製品の均質化につながります。サービス・プロバイダは、サービス・レベル、ローカル市場に関する知識などを通じて自社製品の差別化を図ろうとしていますが、基本的に、これらのサービスの間に大きな差はありません。

しかし、この問題はなぜ起きているのでしょうか?販売先となる企業は数多く存在し、しかもマネージド・サービスとしてのネットワーキングを購入したいと考える企業は増えています。この市場は巨大かつ成長途上にあります。つまり、多数のサービス・プロバイダがビジネスを持続できるだけの十分な機会はあるのです。

問題なのは、エンタープライズ・ネットワーキング・サービスがこのようにコモディティ化されていくと、利益が縮小することです。サービス・プロバイダは、より有利な SLA (Service Level Agreement) やより先進的なセキュリティ・オプションなどのアドオン・サービスを導入することで、顧客をセグメント化し、各セグメントからより多くの収益を生み出すツールを手に入れることができます。しかし、そうしたアドオンが全く同じネットワーク・ソリューションをベースとしている以上、利益は限定的なものになると考えられます。

革新的なサービスによる利益の拡大

サービス・プロバイダが利益の拡大を実現するには、機能を追加する新サービスや、エンタープライズ・ネットワークの強化にとどまらず、エンタープライズ・ネットワーク上で動作する新規サービスを導入することで、製品のさらなる差別化が必要になります。例えば、動画アナリティクス、プライベート 4G LTE/5G ネットワーク、MEC (Multi-access Edge Computing) アプリケーションなどです。これらのサービスは、大元のエンタープライズ・ネットワークを使って接続を行い、ネットワーク・アプリケーションとの共存によってメリットを得るものの、これら自体は実際のネットワーク・インフラストラクチャの一部ではありません。

複数のレポートで、企業はこうした新たなサービスを試したいと考えていることが示されています。例えば、最近の調査によると、新しいサービスが簡単にダウンロードでき、プロビジョニングできるものであれば、試してみたい/ぜひ試してみたいと回答した IT マネージャーは全体の 87% にのぼります。したがって、これらのサービスがリモートからオンデマンドで利用できるとすれば、アドオン・サービスのアップセルのポテンシャルも高いと考えられます。

このような議論は、uCPE にとって追い風になります。フレキシブルなサービス・デリバリ・プラットフォームはすでにネットワーク・エッジに導入され、新サービス提供の準備は整っています。こうしたことから、競争の激しいマネージド SD-WAN 市場において uCPE は有力な選択肢となっています。

uCPE (と収益) をコントロールするのは誰か

そこで、「uCPE をコントロールするのは一体誰なのか?」という興味深い疑問が湧いてきます。サービスを提供すれば、当然収益が発生します。サービスのコントロール=収益のコントロールということになります。これには、いくつかの可能性が考えられます。

キャリアやオペレータのほとんどは、すでに SD-WAN 製品を使っています。SD-WAN がトラフィックからブロードバンド接続に移行するにつれ、そうしたキャリアは利益のあがる MPLS ビジネスが縮小していくことを体感します。uCPE を所有し、uCPE 上で動作するサービスを提供すれば、新たな収益源を生み出すことができます。  実際に、多くのキャリアが uCPE ベースの製品やサービスを発表しているか、そうした計画を持っています。

サービス・プロバイダとなる可能性のあるもう 1 つのグループは、IT サービス企業です。多くはエンタープライズ・ネットワーキング・サービスに関して豊富な知識と経験を持っており、ビジネスを守りたい、いやむしろ拡大したいと考えています。彼らも、uCPE を所有することでメリットを受ける立場にいます。IT サービスの新規参入者やスタートアップにとって、これは、uCPE を活用して魅力的な機会を手にするだけでなく、従来製品と簡単にインテグレーションできるというビジネス・モデルです。

企業は、自社のネットワークは完全にコントロールしたいと考えるため、これをサービス・プロバイダに委譲することはないでしょう。通常、uCPE のオーナーは、uCPE 上で動作するサービスも構築します。しかし、仮想レイヤによってホワイト・ボックスとホワイト・ボックス上で動作するサービスを切り離すことができるようになるため、サービス開発は他社に任せながら、機器を所有して運用を管理することが可能になります。

結論

通信プロバイダは、uCPE をサービス・デリバリ・プラットフォームとして利用することにより、簡単かつフレキシブルな方法で SD-WAN の範囲外の顧客ベースにまでビジネスを拡大しつつ、サービスの利益を増やすことができます。サービス・プロバイダは、uCPE を所有してコントロールすることで、アドオン・サービスを提供し、競合他社を効果的に退けることができるという有利な立ち位置にあります。そのため、SD-WAN に移行中、または移行を計画しているサービス・プロバイダは、その立ち位置を確保しつつ、顧客からの収益を増大する手段として、機能が固定されたアプライアンスではなく、uCPE のデプロイを真剣に検討すべき段階に来ています。

Tomas Hedqvist

Tomas Hedqvist は、Enea の製品マーケティング担当ディレクタであり、

Enea の仮想化/マネージメント・プラットフォームの製品管理部門に所属しています。IT 企業やオペレータに長年勤務し、海外マーケティングや

製品管理について豊富な知識と経験を持っています。