SD-WAN を超えて:主要 3 分野でエッジ・プラットフォームとしての利用が進む uCPE

Roy Chua(AvidThink 社創設者権主任研究員)

最初のブログ記事では、SD-WAN の進化に伴って uCPE (ユニバーサル顧客構内設備) がどのように進化し、SD-WAN サービスのホストとして台頭してきたかについて説明し、最後に uCPE のエッジ・ワークロード例を紹介しました。本稿では、エッジを早期から導入してきた製造、小売、医療の主要 3 分野におけるエッジ・サービスの活用例をさらに掘り下げて考察します。これらは、我々が世界中のネットワーク・ベンダーやティア 1 サービス・プロバイダとの間でやり取りや業務を行う中で実際に経験してきた事例です。我々の取引先の多くは、こうしたイニシアチブを実稼働環境に導入済みか、概念実証をデプロイしているか、デザイン段階にあるかのいずれかに該当する大企業です。

詳細に入る前に、本稿で取り上げる例の他にも(製造、小売、医療以外の)多くの分野が関心を示しているユースケースがあることを特記しておきます。例えば、プライベート 4G LTE/5G デプロイメント向けモバイル・コアの構成要素をホストするプラットフォームとして、uCPE を運用しているユースケースや、 セキュリティやランサムウェアへの関心が高まる中でアクセス・コントロール、ネットワーク・モニタリング、高度な脅威防御などのローカルなセキュリティ・ファンクションのホストとして uCPE を利用し、企業の設備をローカル攻撃から保護しているという非常に有効なユースケースもあります。それでは、分野別のユースケースを見ていきましょう。

1. 製造業向けエッジとしての uCPE

「Industry 4.0」および製造プロセスのデジタル化への動きは、エッジ・コンピューティングの採用を加速する大きな原動力となっています。エッジは、工場、製造現場、倉庫における IoT ゲートウェイまたはローカルデータプロセッサと捉えることができます。IoT ロールアウトの一部は、プライベート 4G LTE または 5G のデプロイメントを伴います。いずれにしても、データをフィルタリングして、イベント・プロセッシング・ロジックをローカルで実行することで、コントロール・プロセスでアクションを迅速に起こすことが可能になります(ローカル・ユーザーに対してトリガに注意するよう促す、自律的なリアクションを行うなど)。これにより、オンサイトの 5G では、遅延が 10 ミリ秒台前半、場合によっては 5 ミリ秒になる可能性もあります。さらに、さまざまなセンサ(温度センサ、振動センサ、音声センサなど)からのデータをクラウドにアップロードする前にローカルで集約して圧縮しておけば、帯域コストの節約にもつながります。我々と取引のあるエッジ・アプリケーション・ベンダー各社は、ローカルでのフィルタリングと前処理により、データを1/100まで削減できることを示しています。この画像は、uCPE が製造業のユースケースをどのようにホストしているかを表しています。ユースケースには、IoT のコントロールおよびアグリゲータ、AGV/AMR のコントロールおよび在庫追跡、映像監視、分散型製造/3D プリンティングなどがあります。

The image shows how a uCPE hosts industrial use cases such as IoT controls and aggregators, AGV/AMR controls and inventory tracking, video surveillance, and distributed manufacturing/3D printing.

画像 1:製造業向けエッジとしての uCPE

 

他の IoT 関連のユースケースとしては、IoT デバイスのセキュリティ・モニタリングとローカルでの保護、デバイスのヘルスチェック、セキュリティ侵害の監視などが挙げられます。uCPE は、こうしたユースケースに対応するのに十分なコンピューティング能力を備えています。AIや機械学習を使用する場合でも、uCPE でハードウェア・アシスト(GPUやAIプロセッサなど)を使用すれば、IoT 処理における負担の大きい推論のワークロードを実行することができます。このパワフルな処理能力は、ヘルスチェックや安全性チェックのためのコンピュータ・ビジョンを強化します。この例としては、フィジカル・ディスタンスの徹底や立入禁止ゾーンへの侵入の追跡などがあります。

オンサイト・コンピューティングを備えた大規模な製造施設の場合、エッジ・クラウドへの移行を検討するところもあるでしょう。このような施設では、ラック内のオンサイト・エッジ・サーバーと uCPE の間でエッジ・ワークロードを分割するケースが考えられますが、そのためにはサーバーと uCPE 間の接続を円滑化する必要があります。

一方で、分散型製造は既に定着しており、積層造形技術(3D プリンティング)の進歩によってその傾向が強まっているため、複数地域にわたる製造施設の分散化は今後も続くとみられます。分散型製造により、顧客ニーズへの対応が迅速化し、さらにアジャイルなカスタマイズも可能になります。このような状況では、uCPE がリモート施設間の接続(SD-WAN/SASE)をサポートし、ローカル製造向けのコントロール/オートメーション・スイートをホストすることで、倉庫内の物品や在庫をローカルで追跡、モニタリングできます。

2. 小売業向けエッジとしての uCPE

小売業者は、多くの小売店舗を展開する高度に分散化した企業です。uCPE は、接続とコンピューティングを融合させる優れたプラットフォームとして、各店舗に配置されています。小売業は、SD-WAN(今はSASE)を積極的に導入してきた主要分野の一つであるため、小売業者向けプラットフォームとして uCPE を利用することにより、運用の簡素化と CAPEX の削減につながります。この画像は、小売業のユースケースで uCPE がどのようにアプリケーションをホストしているかを表しています。ユースケースには、ゲスト Wi-Fi、在庫追跡、ビデオ・アナリティクス、POS の非接触型チェックアウト、店内の顧客高度アナリティクスなどがあります。

The image shows how a uCPE hosts application for retail use cases including guest Wi-Fi, inventory tracking, video analytics, point-of-sale control, contactless checkout, and in-store customer behavior analytics.

画像 2:小売業向けエッジとしての uCPE

 

小売業の場合、uCPE は映像監視やヘルスモニタリング、安全性モニタリングを強化するエッジ・ワークロードのホスティングが可能です(製造業の場合と類似しています)。動画配信速度 2~8 Mbps の(フレームレート、解像度、複雑性、シーンのダイナミズムによって異なる)のカメラ 10 台分の動画は、100 Mbps WAN アップリンクの 60% 超を消費する可能性があります。uCPE 上の AI 推論エンジンからのローカルな意思決定により、ごく日常的な映像は取り除かれ、関心対象となり得る動画や関連性のある動画のみがアップロードされるため、クラウドストレージコスト、帯域コストの両方を削減できます。

この他にも、コールドチェーン追跡のセンサ・モニタリング(これも広域のロジスティックスにまたがる)、センサ、コンピュータ支援による在庫チェック、棚チェックによる在庫追跡などがあります。WAN 障害時でもアップタイムと堅牢性を最大限確保したい場合は、uCPE で POS アプリケーションをホストすれば、接続のない状態で実行できます(パフォーマンスは低下しますが運用は可能です)。

また、最近では、店内での広告や消費者分析のための行動追跡にエッジ・インスタンスを活用する例も見られ、今後小売店舗における新たなユースケースとなる可能性があります。これに関連して、新しいGrab-and-Go(レジなし決済あるいはセルフ決済)アプリケーションも登場し、ショッピングの利便性を高めています。

さらに、uCPE を店内 Wi-Fi と併用することで、顧客のインターネット・アクセスを向上させている例もあります。冒頭でも説明したように、ネットワーク・アクセス・コントロール・アプリを使用すれば、従業員が使用する業務用デバイスをゲスト・トラフィックから切り離すことができます。

最後に、小売の世界的な重要トレンドとして、ポップアップ・ストアの急増について触れたいと思います。固定ワイヤレス・アクセス(5G/LTE)とモバイル接続の実現により、uCPE は、ポップアップ・ストアを支える理想的なオールインワン型ソリューションの一つと位置付けられています。uCPE は、PCI 準拠の POS アプリケーションをはじめとする店内アプリケーションを提供しつつ、いつでもどこでもセキュアな接続を実現します。

3. 医療分野向けエッジとしての uCPE

ここでは、uCPE の活用が注目される分野として、医療分野を取り上げます。小売業や製造業と同様に、医療分野でも IoT が主流です。特にこの分野では、医療機器やデバイスをインターネットと接続するという意味で、IoMT(Internet of Medical Things)という用語が使われています。uCPE エッジ・プラットフォームは、医療機器の追跡や患者データの更新、IoMT デバイスからのイベント・データに基づくローカル処理や意思決定を強力にサポートし、トリガやしきい値によるリアルタイム・アラートを提供しています。uCPE はローカルであるため、インターネット接続が失われた場合でも、運用が中断されることはありません。患者の安全性と健康にとって、これは必須条件です。この画像は、医療分野において uCPE がどのようにアプリケーションをホストしているかを表しています。ユースケースには、ゲスト Wi-Fi、IoMT センサの集約、医療関連アプリのアナリティクス、病室内患者の安全性モニタリング、映像監視、リモート診断アプリなどがあります。

The image shows how a uCPE hosts application for healthcare use cases including guest Wi-Fi, IoMT sensor aggregation and health app analytics, patient in-room safety monitoring, video surveillance, and remote diagnostic apps, .

画像3:医療分野向けエッジとしての uCPE

 

小売業や製造業と同様に、映像監視やコンピュータ・ビジョンを用いて患者や訪問者の健康状態と安全性を追跡し、病室内モニタリングで入院患者を安全に保つことができます。こうした映像監視では多くの場合、uCPE にアドイン・カードを追加するなど、ハードウェア・アシストが必要になります。

このハードウェア・アシストによる推論は、AI(人工知能)/ML(機会学習)のオピニオンをリアルタイムで提供するため、オンサイト診断や拡張現実(AR)支援による診断に活用できます。こうした特長は、特に僻地の診療所など、機器ラックを備えたサーバールームの設置や信頼性のある帯域幅での接続が難しい遠隔地の施設にとっては、きわめて有用です。

リモートのロールアウトでは、耐久性を高めた uCPE が役立ちます。5G/4G LTE 接続オプションを内蔵することで、僻地の病院や診療所でのデプロイメントが可能になります。このプラットフォームにより、ローカル・コンピューティングのオプションが提供されると共に、米国 HIPAA 法(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996)やその他の法規制に適合する接続セキュリティを確保することもできます。

まとめ:新たなエッジ・サービスに対応できる柔軟性を提供する uCPE

uCPE は、SD-WAN や SASE といった VNF(バーチャル・ネットワーク・ファンクション)をホストするだけでなく、フレキシブルなリモート・プラットフォームとして進化しています。我々は、uCPE がセキュア接続の要素をホリゾンタル・プラットフォームにマイグレートする例や、uCPE が安全かつ信頼性のあるリモート接続を備えたエッジ・プラットフォームへと発展した例を目にしてきました。uCPE が他のオンサイト・エッジ・プラットフォームをどのように補完するか、またこれらとどのように競争していくか--今後数年間はこの話題に注目が集まりそうです。我々も引き続きこの話題を追っていく予定です。